乳がんとは?乳がんは「治る」可能性が高い病気
乳がんは、乳房のどの部分にできるかによって名称が異なります。
1 乳管がん:乳管にできるタイプの乳がん。乳がん患者さんの90%は乳管がんとされる。
2 小葉がん:小葉に発症するタイプの乳がん。患者さん全体の5~10%にみられる。
乳がんは圧倒的に女性に多い疾患ですが、ごくまれに男性が発症することもあります。
乳がんは全身治療が必要となるがんですが、早期発見・早期治療を行えば治る可能性が高い疾患でもあります。国立がん研究センターによれば、乳がん患者さんの10年生存率は今や90%以上を越えているとされます。乳がんと診断された場合でも決してあきらめず、まずは医療機関に相談してみてください。
乳がんの症状「胸のしこり」「リンパ節の腫れ」には注意
一般的には下記の症状がみられます。
1. 胸のしこり
2. 皮膚の変化(乳頭からの出血、潰瘍、えくぼのようなくぼみ、赤みを帯びた腫れ)
3. リンパ節の腫れ
4. 胸の痛み
乳がんが他の臓器に転移した際の症状
転移した場所に応じて呼吸器症状や消化器症状などが生じます。また骨転移した場合は骨折や腰、背中の痛みが現れます。
東京医科大学乳腺科は骨転移の先進治療施設であり、乳がんの骨転移形成期所に基づいた治療体系のもと、患者さんをサポートします。
乳がん治療の流れ―問診から検査、診断まで
まずは問診にて既往歴や家族歴、実際の症状などを伺います。
検査ではまず超音波検査で腫瘍の位置を確認します。マンモグラフィーはまだ撮影をしたことがない患者さんの場合、必要に応じて撮影します。検査でしこりがみつかった場合、しこりの性質(良性か悪性か)を確認するため、生検(せいけん)を行います。
しこりの正体が悪性腫瘍、すなわち乳がんであると診断がついたならば、さらに精密検査(MRIやCT、骨シンチグラフィ、腫瘍マーカーなど)を行い、状態を詳しくみていきます。
乳がんの治療には手術をはじめ、化学療法や放射線治療、ホルモン治療など様々な方法があります。東京医科大学乳腺科で行う手術は「局所治療」に分類され、患者さんの容態やご希望に応じて乳房部分切除や乳房切除などの術式を検討していきます。
図:乳房部分切除術のイメージ
乳房切除術と乳房再建
乳房再建とは、乳がん手術によって切除した乳房を新しくよみがえらせる形成外科的手術です。
再建は自家組織(患者さん自身のからだの組織の一部)を使う方法と、インプラント(人工物)を使う方法の2種類に大別されます。
乳がん患者さんの様々な想い-乳房再建のニーズとは
乳房再建の対象となる患者さんは「手術で乳房を切除する方」と「すでに乳房を切除した方」です。
前者に該当する方は、乳房を失う悲しみを抱いていらっしゃるはずですが、再建で再び胸のふくらみが取り戻せることは患者さんにとって大きな希望となるでしょう。
一方、すでに乳房を全摘出している患者さんの多くは、乳房がないことによる「不便さ」を感じています。乳房を切除したままだと、洋服がきれいに着こなせなかったり、パッドがわずらわしいなど生活の質を低下させてしまいかねません。手術前にこの不便さをある程度想像していたとしても、実際に乳房を失ってからより強く実感することになります。
このような場合、乳房再建で乳房のふくらみを維持する・取り戻すことは患者さんの「自信」回復に繋がります。
「乳房再建をしない」という選択もある
一方で、乳房再建を希望しない患者さんもいらっしゃいます。入院期間を考慮される方、また「あえて胸のふくらみを作らなくてもいい」「ふくらみがなくてもあまり気にしない」という方もいらっしゃいます。
乳房再建実施の有無は今後の患者さんの人生を左右する大きな選択になるため、医師に相談しながら考える必要があります。
東京医科大学乳腺科は乳房再建を担う形成外科と密な医療連携体制を築いており、再建を行う場合には双方の専門医がタッグを組んで、患者さんの満足できる結果に終わるよう、入念な準備を行ったうえで治療に当たります。
乳がんの発症原因は?
女性ホルモンの量
発症に最も関係するといわれているのは「エストロゲン」という女性ホルモンです。エストロゲンが体内に多くある方ほど、乳がん発症のリスクが高まると考えられています。また、避妊薬の使用や閉経後の性ホルモン補充療法など、人為的なホルモンの過剰摂取も同様に乳がんのリスクファクターとなることが知られています。
女性ホルモン以外の要因
女性ホルモン以外にも、乳がんの発症リスクを高める要因が報告されています。下記に具体例を上げます。
・成人後の肥満(特に閉経後の肥満)
・初潮年齢が早い、閉経年齢が遅い
・飲酒や喫煙習慣がある
・良性乳腺疾患の病歴がある
・糖尿病などの疾患を持っている
・遺伝的な要因がある
※遺伝性乳がんを発症する原因遺伝子の代表格はBRCAという遺伝子です。本来、BRCAは損傷した遺伝子の修復機能を持つ遺伝子ですが、BRCAが変異によって遺伝子修復機能がエラーを起こし、その結果としてがんの発症リスクを高めると考えられます。
遺伝性乳がんについてはこちらの記事もご参照ください。
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